むかしむかしのことじゃった。ギリシアの村にΣくんという子がおってな。
この子には変なクセがあって、何でも並べてくっつけてしまうのじゃった。
河原に行っては石ころを並べて粘土で1つにくっつけてしまい、
大工さんのそばにいるときは、柱を並べて釘で1つに打ち付けてしまったもんだ。
困り果てたおっかさんは、「なんとかモノを使わねぇでも、1つにくっつける遊びはねぇもんかのう?」と
村の名主さんに尋ねてみたもんだ。
すると名主さんは物置から、数の書いてある札をいっぱい持ってきて、
「こいつをΣに渡すといい!札に書いてある数を小せぇ順に並べて1つの数をつくらせるといいだ。」とこういうでねえか!
おっかさんは不思議に思いながらもΣ君に「この札を並べてけろ。」と何の期待もせんとつぶやいてみた。
ところが、Σ君はもらった札からいくつか数を取り出しておもむろに並べ始めたではねえか。
おっかさんはその様子をじっと見ていたが、
やがてΣ君は「今並べた数を一緒にすると55になるだよ。おっかさん!」とビックリした顔で答えたではねえか。
そのあとも、名主さんからもらった札をドンドンと並べては
「今度は一緒にすると100になるだ。」とか「今度のは110になるだ。」とかいっては、
飽きもせずずっと並べては数を足していったもんだ。
Σ君ばかりが驚いたのではねぇ。
おっかさんもΣ君が札を並べている様子を見ると、
キチンときまったきまりで数を並べているのが目で見て分かった。
つまり最初の55はこうなるだよ。1+2+3+4+5+6+7+8+9+10=55
次の100はこんな並びだった。1+3+5+7+9+11+13+15+17+19=100
最後の110は、2+4+6+8+10+12+14+16+18+20=110
おっかさんがΣ君にどうしてそんなに簡単に並べた数の合計がわかるのかたずねたところ、
Σ君は「俺にもよくわからねぇ、けれども順序よく動いていく数の番号を[k]とおくだよ。
そんでな、こいつを1から10まで動かしてみると、
並んでいる数のきまりとそいつを一緒にした数が勘定できるだよ。
まったく俺も驚いて‹和っ!›と叫びてぇくらいだ!。」
それ以降、村の人たちは、作物の収穫量を数えたり、安息日(休日)の数をかぞえたりするのにΣ君に頼るようになっただ。